恋愛境界線
scene.16◆ もうここには居られない
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若宮課長のマンションは、一人暮らしの男の人が住むにしては広い2LDK。


元々は、支倉さんと一緒に住む為に選んだに違いなくて、私に貸してくれた一室にあったドレッサーだって、若宮課長が女装する為に置いてあるわけじゃなく、一時期、一緒に暮らしていた支倉さんが使用していた物に違いない。


こんな、支倉さんの存在が感じられる場所で、支倉さんと食事をしたり、支倉さんと会っている課長の帰りを待つのは、正直キツイ。


多分、きっと、今が潮時なんだ――ここから出て行くには。


次に住む場所を見つけるまで、なんて言いながら、今まで一度だって積極的に次の物件を探そうとすることはなかった。


仕事が忙しいのもあるし、本気で探そうと思えばきっとすぐに見つかるだろうから、まだ大丈夫と怠惰に先延ばしにしていたことも一因で。


だけど、一番の理由は、なんだかんだ言っても若宮課長と一緒に居るのが楽しかったから。


一緒に居たいと、もう少しだけ、もう少しだけと、今日まできてしまった。


でも、これからはそうはいかない。


このままいけば、そう遠くないは未来に、支倉さんと若宮課長はまたよりを戻して付き合い始めるだろうし、そうなったら、さすがにもうここには居られない。


何より、その過程をこのまま側で見ているのはつらい。


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