恋愛境界線
「──ただいま」
今日も私より遅く帰ってきた若宮課長に、「おかえりなさい」と返す。
今日も支倉さんと一緒だったんですか?
そう訊ねるより先に、若宮課長は私にコンビニの小さな袋を差し出した。
「これ、お土産。芹沢君、好きだろう?」
中を覗けば、そこには私の好きなチョコレートプリンが一つ。
「そうですけど、どうして知ってるんですか?」
たった今まで塞ぎ込んでいた気持ちが、プリン一つで簡単に上昇する。
「さっきコンビニに寄った時、泉が『これ、芹沢さんが美味しいって言ってた』って」
……やっぱり。支倉さんと一緒だったんだ。
その事実を知ってしまえば、嬉しい気持ちなんて霧散して、心の中には嬉しかった気持ちの何倍もの虚しさだけが残った。