恋愛境界線

「明日は早いんだ。……だから、付き合うのは一杯だけだ」


「はい。有難うございます」


冷蔵庫に入っていたビールを取りに向かうと、若宮課長は私の後をついて来てグラスを用意してくれた。


ナッツと冷蔵庫にあったパンチェッタをおつまみに、二人で飲み始める。


会話が弾むでもないから、テレビで放送されていた映画をBGM代わりにすることにして。


映画は既に半分以上が終わっていて、主人公が叶わぬ恋に苦しんでいるシーンが映し出されている。


「これ、狙ってるんだろうなって思っても、ラストでは絶対にその思惑通り泣いちゃうんですよね」


「だろうね。君は素直だから」


以前にも言われた課長のセリフに、褒め言葉なのか、嫌味なのか判らなくて苦笑する。


今は、「それって、遠回しに単純と言ってるんですか?」と軽口を叩く気分にもなれない。


あえて追及はせず視線をテレビに戻せば、映画の主人公は「どうして君を好きになってしまったんだろう」と嘆いていた。


「……若宮課長は、どうして支倉さんを好きになったんですか?」



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