恋愛境界線
「あーぁ、温泉にでも行きたいなー。それで、ゆっくり、まったり、のんびりしたーい」
「それなら、今度長期休暇が取れた時にでも行くか?」
「あっ、いーね!渚が車出してね」
「純も誘って三人で、だろ?」
「そうそう。それがデフォだから」
そう言って笑うと、つられた様に渚も笑った。
渚は笑うとどこか幼く見える。普段の澄ました表情とのギャップのせいでもあるし、笑った顔には少年の頃の面影が残っているせいでもあるからだと思う。
昔から当たり前の様に一緒に居たし、大人になった今でもこうして一緒には居るけれど、渚ともいつか距離が遠くなったりするのだろうか――若宮課長との様に。
気持ちが蔭りそうになった時、渚が「……で、それって本気だったりしないよな?」と訊いてきた。
「何が?」
「だから、純と三人で温泉に行くっていうやつだよ」