恋愛境界線
「あー、それね。話してたら、何だか本当に温泉に行きたくなってきちゃった。本当に今度三人で行っちゃう?」
そう訊ねると、渚からは即座に「行っちゃわない」の答えが返ってきた。
「なんで?渚って温泉嫌いだったっけ?それとも、車を出すのが面倒だから?」
「そういう問題じゃなくて。考えるのも恐ろしいんだけど、その場合、純は当然の様に遥と一緒の風呂に入るわけだろ?」
「当然の様にも何も、そんなの当たり前でしょ。純ちゃんも女性なのに、男湯に行ったら問題になるじゃん」
純ちゃんは、顔の見た目や心だけじゃなく身体もしっかり女性だ。
今まで、スパに行って一緒に岩盤浴やサウナを体験済みだし、一緒に温泉に入ることにも抵抗なんてない。
「……だよな。そうなるよな。うん、よし。ぜってー行かねぇ」
私たちの横を通り過ぎた店員さんが、入口の方へ向かって「いらっしゃいませー」と、声を張り上げた。
「えっ、何?何?渚ってば、もしかしてヤキモチ?一番の親友を私に奪われたとか思ってる?それとも、渚も純ちゃんと一緒に入りたいとか?」
きゃー、えっち!と、からかってみたら、渚は飲んでいたビールを吹き出し掛けた。