恋愛境界線
僅かに驚きの表情を浮かべながら、「芹沢さん?」と洩らした支倉さんに
二人に会いたくなかった気持ちを顔には出さず、「お疲れ様です」と挨拶をした。
「お知り合いですか?」という店員さんの問い掛けに、支倉さんと私が同時に頷く。
すると、店員さんは申し訳なさそうに「現在、あいにく店内は満席となっていまして」と、私たちにも聞かせる様に説明してきた。
「本日はご予約のお客様もいらっしゃるので、お席にご案内出来るまで大分お待ち頂くことになるのですが……」と。
「それで、もしお客様方さえよろしければ、相席をお願い出来ますでしょうか?」
遠慮がちに訊ねてきた店員さんに、支倉さんは「でも……」と、困った様に課長を仰ぎ見た。
「支倉さんたちが構わないのであれば、私たちも全然構いませんよ。ねっ、渚?」
本当は嫌だけど、まさか嫌とは言えないし、この状況で黙っているわけにもいかない。
満席で当分席が空きそうにないという話を聞かされた時点で、こう答える他はなかった。
尚も躊躇っている二人に、渚は「良かったら、どうぞ」と席を立ち、自分の飲み物や取り皿を私の隣へと移動させた。