恋愛境界線
四人掛けのテーブルには、私の右隣に渚。テーブルを挟んで私の正面に若宮課長。隣に支倉さん。
支倉さんと渚は面識がないけれど、支倉さんは渚のことを知っていたらしい。
「広報部の支倉です。秘書課の緒方さんですよね?」
「はい。支倉さん……っていうと、確か若宮さんの元婚――」
元婚約者、と呟こうとしたのを察知して、慌ててテーブルの下で渚の足を蹴った。
「元婚」まで呟いてしまった渚の言葉を誤魔化す為に、お品書きへと手を伸ばす。
「糸こん!そう、糸こんにゃく!」
「何だよ、糸こんにゃくって」
「渚、糸こんにゃく好きでしょ。糸こんにゃくが入ったメニューってあるかな?」
「何言ってんだ?俺、別に糸こんにゃくなんて好きじゃないんだけど?」
どうしてこうも察しが悪いかな!?というか、なんて空気が読めないんだ!
鈍い渚を横目で睨んだ後、「お二人は何にしますか?」と、お品書きを傾けた。