恋愛境界線

注文してすぐに運ばれてきた飲み物を片手に、四人で乾杯をする。


「ところで、芹沢さんと緒方さんって、もしかして付き合ってるの?」


支倉さんが、青りんごサワーを一口飲んだ後、にこやかに訊ねてきた。


「違いますよー。渚とは幼なじみなんです」


「正しくは、幼なじみと言う名の許婚(いいなずけ)、ですけど」


「違いますよー。許婚という名の幼なじみってだけです」


私がそう言うと、隣で渚が「それだと、つまりは許婚ってことだよな」と口を挟んでくる。


「あれ?えっと、そうかな?……とにかく!ただの幼なじみ、です!」


支倉さんは私の言葉を信じているのかいないのか、「何だかお似合いね」と笑った。


その隣では、微塵も笑わないどころか、話を聞いているのかいないのかすら判らない若宮課長が、黙ってお酒を飲んでいる。


これは、支倉さんと二人きりの時間を邪魔した私たちに対する、無言の抗議か何かだろうか。


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