恋愛境界線

若宮課長は一瞬、私に鋭い視線を向けたものの、あくまで素知らぬ態度で押し通すつもりなのか、「それなら、有難く頂くよ」と余裕たっぷりに言って、私の皿を受け取った。


「そうそう、確か芹沢君は玉ねぎが好きじゃなかったか?お礼にこれも食べるといい」


そう言って、私の皿からサーモンだけを取り除き、残った玉ねぎの上に更に自分の分のマリネの玉ねぎを追加し、私の方へと突き返してきた。


せっかく支倉さんが綺麗に取り分けてくれたマリネは、課長はサーモン、私は玉ねぎの割合がおかしいことになっている。


「〜〜〜課長っ、どうして私にはこういう意地悪をするんですか!人の嫌いなものを!大人げないですよ!」


「意地悪?大人げない?最初に大人げなく嫌がらせしてきたのは君の方だろう?」


「元はと言えば、課長が私のことを大雑把だとか言って、貶したのが悪いんじゃないですか!」


「私は本当のことを言ったまでだ。それに対して君が腹を立てるのは、私の言ったことが図星だったからだろう」


「違います!大雑把という言葉自体に腹が立ったわけじゃありません」


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