恋愛境界線

「以前、君自身がそう言っていたじゃないか。散々、人のことをゲイ扱いしておいて何を言うんだ」


確かに!確かに、そんなことを言ったこともあったけれども!


だけど、そんな噂話を会社で流したことは、誓って一度もない。完全に無実だ。冤罪案件だ。


「断じて、私じゃありません!」


「若宮くん、本当よ。芹沢さんじゃないのは確かだわ」


支倉さんがさり気なくフォローしてくれた途端、反論していた課長が驚くほどあっさりと引いた。


判ってもらえたことは嬉しいけど、微妙に嬉しくない。


支倉さん相手だと、どうしてこうも違うのだろうと思うと、簡単に引き下がる課長の態度に嬉しくは思えない。


「もういいです。サーモンだって、私が全部食べますから!嫌いなのを無理して食べなくてたっていーです!」


若宮課長の目の前に置かれている皿を奪い取る。課長はサーモンが嫌いでも、私は好きだし。お腹もまだいっぱいじゃないし。


「えっ、若宮くんってサーモンが苦手だったの?」


私の言葉に、支倉さんが今初めて知ったという様な驚いた反応を示した。


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