恋愛境界線
若宮課長が決まり悪そうに、「苦手なだけで、別に食べられないわけじゃない」と答える。
「そんな答え方をしている時点で、嫌いだってことがバレバレじゃないですか」
私がぼそりと呟くと、「君は少し口を閉じててくれないか」と、八つ当たりされた。
四人でいるのに二人きりの世界を作ろうとするなんて、一体どういう了見なんだか。
面白くなくてグラスを一気に呷る。
視線を感じて隣を向くと、渚も何だか今の私が浮かべているであろう表情と似た様な顔をしていた。
「渚、どうかしたの?」と訊ねてみても、返ってきたのは「別に」の一言で。
下手にツッコんで訊くのは、藪蛇になりかねない。
「だったら、笑えー!」
課長と言い合ってた少しの間、渚のことをのけ者にしたわけではないものの、置き去りにしてしまった自覚はあるだけに、今度は渚を構ってあげようと、渚の両頬を左右に引っ張った。
すると、渚は「痛ぇよ」と言いつつ、微かに笑ってくれた。