恋愛境界線
「まぁまぁ。渚の物は私の物、私の物は私の物でしょ」
そう言って、空になった自分のグラスの代わりに、渚のビールを更に一口呷った。
「何だ、そのジャイアニズムは」
呆れる渚に、はっはっはーと笑い返しながら、まだ半分以上残っているグラスを返す。
「渚がケチだから、私は私で新たに注文しよーっと!」
べーっと舌を出して、お品書きのお酒のページを開いた。
「何にしよっかなぁ。そうだ!CMを見て、一度ハイボールを飲んでみたかったんだよね」
そう言っていると、正面から若宮課長が腕を伸ばしてきて、私の手からお品書きを奪った。
「芹沢君は、もうその辺でやめといた方がいい。君は四杯目を超えた辺りから危ないと言っていただろ」
「大丈夫ですよ。まだ二杯目なんですから!」
「それは、私たちが来てから飲んだ量だろう」
そう言われてみれば、若宮課長たちが来る前に私はグラスを既に二杯空けている。
だけど、今日は誰かさんのせいで全然酔えなくて、まだまだ飲み足りない。