恋愛境界線

店員さんが運んできた、ウイスキーなしのハイボールを早速一口飲む。


「……あれ?アルコール感ゼロで、ただの炭酸を飲んでるみたい」


もしかして、自分で思っているよりも酔っていて、味覚が鈍くなってるのかもしれない。


そう思ってもう一度飲んでみるけれど、やっぱりソーダの味しか感じられない。


相変わらず何とも言えない表情を浮かべている支倉さんに、「これなら支倉さんも飲めると思いますよ」と声をかければ


「遥、ハイボールはウイスキーをソーダで割ったものだから、それはハイボールじゃない」と、気の毒そうに渚が教えてくれた。


ウイスキーをソーダで割ったものをハイボールと呼ぶのなら、ウイスキーを抜いたこれは……。


「ただのソーダじゃないですか!」


「君は知らなかったのか?」


若宮課長が、『ハイボールは、実はウイスキーを抜いた方が上手いんだよ』と言ってきた時と同じ口調でしれっと言う。


「そんなことも知らない君には、ハイボールよりそれがお似合いだ」


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