恋愛境界線
これは一体何の復讐なんだと憤慨しながら、悔しまぎれにソーダを一気飲みする。
「すみませーん!ソルティ・ドッグを一つお願いします」
気を取り直して、近くを通り掛かった店員さんを呼び止めた。
ついでにと、支倉さんはソフトドリンクを、若宮課長はお酒を一緒に追加する。
その間に私は、「今頼んだお酒を飲み終えたら、もう帰らない?」と、渚に耳打ちをした。
そうこうしている内に、頼んだお酒が再び運ばれてきて。
塩が付いた縁に軽く唇で触れ、ゆっくりとお酒を喉へ流し込む。
「美味い?」と渚に訊ねられたけれど、素直に頷くことは出来ない。
「美味い不味い以前に、これもアルコール感がないような……?」
「それはさっき、私が『ソルティ・ドッグはウォッカ抜きで』とお願いしたんだ」
またしても、若宮課長がしれっとした口調で言い放った。