恋愛境界線
ハイボールのウイスキー抜きの次は、ソルティ・ドッグのウォッカ抜きときた。
「それじゃあ、これはただのグレープフルーツジュースじゃないですか!」
「それは知っていたのか。グレープフルーツジュースは嫌いじゃないだろう?遠慮せず飲みなさい」
どうして飲み物のことにまで、いちいち口出しされなきゃいけないのだろうか。
課長が好きなのは支倉さんなのだから、私のことなんて構わなければいいのに。
「……渚、これとそれ交換して!」
渚の返事を待たずに、飲みかけのビールとジュースと交換する。
口の脇からビールが零れてしまいそうな勢いで、グイッとグラスを傾け、グラスの1/3ほど残っていたビールをそのまま一気に飲み干した。
「ご馳走様でした!私たちはこれで失礼しますので、あとはお二人でごゆっくりどうぞ」
そう言って勢い良く立ち上がると、一瞬視界がぐらりと揺れ、足元がふらついた。