恋愛境界線

寝室の隣にあるリビングダイニングでは、純ちゃんがお昼ご飯を並べていて。


「ホットサンドを作ったんだけど、食べられそう?もし食欲がないなら、フルーツだけでも食べて」


病人でもないのに、「無理しないでね」と必要以上に優しく気遣ってくれる純ちゃんに対して申し訳なさが募る。


本当は食欲なんてなかったけれど、せっかく用意してくれたホットサンドに手を伸ばした。


薄っすらとカレー風味の味付けがされた千切りキャベツに、溶けたチーズと焼いたベーコンが挟まれたサンドは美味しくて


こんなに落ち込んでいるのに、美味しいと感じられることが嬉しい様な悲しい様な、そんな気持ちになる。


「そうだ。純ちゃんの彼氏さんによろしく伝えといてね。私のせいで、昨日は会社に泊まり込んだんでしょう?」


「遥はそんなこと気にしないでいいの。それよりも、遥こそ大丈夫?同じ職場だし、キツイんじゃない?」


「……ううん、平気。課長とは今までだって上司と部下の関係で、これからもそうだってだけだし」


課長と私の関係は、今までがそうだった様に、これからも上司と部下のまま。


あれだけ長い間ぐちゃぐちゃと思い悩んでいたというのに、言葉にしてみればそれは酷く単純で。


どんなごちゃごちゃ悩んでいることでも言葉に変換してみると、それは驚くほどシンプルで、案外答えがすとんと胸に落ちてくるから不思議だ。



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