恋愛境界線
渚の揺れる視線を不思議に思い、近づいて顔を覗き込む。
「何?どうしたの?他にも何か、私に言いたいことがあるとか?」
「……いや。今日は妙にしおらしいって言うか、いつになく素直すぎて遥らしくないから、こっちまで調子が狂う」
渚が何を言いたいのか、どうしてそんなに照れた様に動揺しているのか、私にはさっぱり判らないけれど、いつもとどこか違う様子にこっちこそ釣られそうになる。
この妙な雰囲気を掻き消そうと、わざといつもより大きめの明るい声を上げた。
「そうそう!手作りサンドウィッチがあるの。お昼まだなら食べて」
帰り際、純ちゃんが持たせてくれた普通のサンドウィッチを差し出す。
「遥の手作り?」
「まさか。純ちゃんの手作り。きっと、これもめちゃくちゃ美味しいよ」
「何が悲しくて、この流れで男の――もとい、純の手料理を食わなきゃいけないんだか」
男の、のセリフにローキックをお見舞いしようか迷ったけれど、今日は特別見逃してあげることにした。