恋愛境界線
右肩がほんの少しだけ重いけど、決して不快じゃない。
若宮課長といる時みたいに緊張もしないし、沈黙も苦痛でもない。
好きとは違うけれど、穏やかな気持ちでいられる。
前のめりの恋よりも、きっとこういう恋愛の方が幸せなのかもしれない。
ちょうどそんなことを考えていた時だった。
「……なぁ、俺じゃ駄目か?」
私の肩にもたれて目を瞑っていた渚が、そのままの姿勢で、私の耳元で囁く様にポツリと声を洩らした。
いくら私でも、『何が?』なんて訊かなくても、何のことなのか判る。
だけど、渚がどういう気持ちで言ってるのか判らない。
だって、物心つく前からずっと一緒だったから。
私は渚を異性として意識ことがない分、渚が私のことをそういう風に意識してくれてるなんて、想像が出来ない。