恋愛境界線
両親が許嫁だなんて言ったから。私のお父さんが、私のことをいつも渚に頼むから。
そういうことが、渚にこういう行動を取らせてるんじゃないかって思う部分の方が強い。
口では何だかんだ言ったって、今でも正義感が強くて面倒見の良い渚のことだから。
「遥、ちゃんと聞こえてるんだろ?」
「……ん」
既に映画は終わり、クレジットロールが流れている画面を注視したまま短く答える。
途端に、フッと右肩が軽くなった。
「なら、誤魔化すのも、とぼけるのもナシで、ちゃんとした返事が聞きたいんだけど」
渚が私の方を向いて、私の身体も自分の方へと向けさせ、向かい合う形を取らせる。
かち合った視線の先。渚の眼差しには、いつになく真剣な色が滲んでいた。
「……それって、今答えなきゃ駄目?」