恋愛境界線
「課長は、頑張ってる人を自分からは絶対に見限らない――か」
手のひらの飴を見つめながら、深山さんの言葉を反芻する。
確か、以前にもどこかで、似た様な言葉を耳にしたことがある。あれはいつのことだっただろう……?
──そうだ。パクトケースの件で落ち込んでいた頃、浅見先輩が言ってたんだ。
『課長は自分にも他人にも厳しい人だから、ね』って。
『仕事にもシビアだけど、でも頑張ってる人を見放さない人だから』と。
浅見先輩や深山さんが言う通り、若宮課長はそういう人だ。
初めの頃は、使えない人間はスパッと切り捨てるというイメージがあった。
だけど、実際の若宮課長はそうじゃなくて。
一緒に仕事をして、そういう人じゃないってこと位、他の人の言われなくても判っているつもりだったのに。
自分のことでいっぱいになると、そんな判り切っていることさえ、私はすぐに見失ってしまう。