恋愛境界線
自分の不甲斐なさに唇を噛みながら、もらった飴のパッケージを破く。
小さな袋の中から出てきたのは、ビタミンカラーの鮮やかな黄色。
口に含むと、レモンの甘酸っぱい味が口いっぱいに広がった。
支倉さんと同じ様に見られたいなんて思わない。女性だと思われなくても構わない。
私が課長にとって、恋愛対象外だということは判ってる。
だけど、部下としての位置までは手放したくない。
仕事が出来ないとか、仕事に対していい加減だとか、そんな風には決して思われたくない。
若宮課長を見返してやりたいわけじゃなくて。
仕事に対して常に真摯な若宮課長だから、その部下である私もそうでありたいだけ。
そうやって、仕事で一緒に肩を並べられるだけでいい。
レモン味の甘酸っぱさに少しだけ切なさを感じながら、そう思った。
それから、
望むのはそれだけだから、それなら自分次第で叶えられる――とも。