恋愛境界線
「有難うございます」と、言いながらスマホを受け取る。
すると、課長がぼそりと呟いた。
「それにしても、君の趣味は本当に判らないな……」
「えっ?」
「そのストラップの良さが、私には全く理解出来ない」
「あぁ、これですか?」
スマホに付けていたストラップに触れる。
「これは、渚が出張に行った時に買ってきてくれたんです」
「……緒方君の土産物だったのか」
みやげものじゃなくて、“いやげもの”ですけど。
わざわざウケ狙いで買ってきてくれたストラップには、へんてこなマスコットが付いている。
それは、『よくこんなデザインが商品として採用されたなぁ』と思わずにはいられないほど、センスが壊滅的に酷い。