恋愛境界線
ブサかわの“可愛い”が完全に欠如していて、ブサイクすぎる余り、失笑するのではなく無言で突き返しそうになったくらいだ。
「どうせウケ狙いで買ってくるなら、もっとちゃんと笑える物を選んで欲しいですよね」
ストラップの先に付いたマスコットを指先で突きながら、冗談交じりの愚痴を洩らす。
その時は本当に突き返そうとしたけれど、渚的には私が笑わなかったことが不満だったらしく、『これじゃあ何の為に買ってきたのか判らないから、こうなったらスマホに付けて笑いでも取れよ』と、無理やり付けさせられた。
「ウケ狙いでそういう物をわざわざ買ってくる辺り、君と緒方君は波長が合うのかもしれないな」
これは皮肉なのか、嫌み抜きでお似合いだと言いたいのか何なのか。
課長の言葉にどう反応すれば良いのか判らず、ストラップのマスコットを見つめていると、打って変わって、今度は遠慮がちに若宮課長が問いかけてきた。
「……けれど、大丈夫なのか?」
「大丈夫って、何がですか?」
思わず視線を移動させると、どこか深刻そうな面差しをした課長が私を見つめていた。
「緒方君に、社長のお嬢さんとの……その、縁談が持ち上がってるって聞いたんだが」