恋愛境界線

そんな話は渚から聞いていないし、噂話としてさえ私の耳には入ってきていない。


「……それって、本当ですか?」


「噂で耳に挟んだだけで、私も詳しいことは知らないが、信憑性は高いと思う」


噂話の大半は尾ヒレが付いていたり、事実とは全く違っていたりする。


だけど、この件に関しては内容が内容なだけに、噂通りの様な気がしてならない。


「あのっ、課長。それで渚は……渚は、何て答えたんですか?」


「知らないよ。本当に、緒方君から何も聞いていないのか?」


「は――あっ……!」


はい、と答えようとしたところで、ふと思い至った。


もしかしたら、渚が今日私に話したいことって、このことなのかもしれないって。


そう思い至ったところで、左手に持っていたスマホのディスプレイが淡い振動と共に光を放ち、電話の着信を告げた。



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