恋愛境界線

「課長、ちょっと失礼します」


スライドで通話を応答状態にさせると、すぐに電話越しに渚の声が聞こえてきた。


『遥、まだ社内か?』


「うん。ってゆーか、メールしてって言ったのに」


課長に背を向け、トーンを抑えて電話の向こう側にいる渚に語りかける。


『メールだと、返事を待ってる時間が勿体ないだろ。それより、今から大丈夫だよな?』


「うん、大丈夫。駐車場に行けば良い?」


『うん。店、予約入れてたんだけど、ちょっと遅れてるから、悪いけど急いで』


「人を待たせておきながら偉そうにぃ。こうなったら、いっぱい食べて全部奢らせてやるんだから!」


『はいはい。思う存分食べて良いから秒で来いよ、秒で』


笑いながらそう話す渚の声に向かって、心の中で舌を出しながら通話を終えた。


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