恋愛境界線

元々は、結婚をするつもりだった二人で、別れたのだって、お互いに相手を嫌いになってのことじゃない。


過去に、自ら若宮課長から離れた支倉さんは、また若宮課長とよりを戻したがっていた。


その気持ちを知った若宮課長が、支倉さんとの結婚を再び考え直すのは不自然なことじゃない。


むしろ、これは当然の成り行き――。


「……遥?」


その声に顔を上げれば、私の正面では渚が不可解そうな表情を浮かべて、こっちを見ていた。


「あっ、ごめん。てか、支倉さん以外いないよね……そう、だよね……」


髪を耳に掛けながら、反対の手は無意識にグラスへと伸びた。


妙に心がざわついて、やけに喉が渇く。


ワインを喉の奥に流し込んだけれど、味覚が麻痺したかの様に、味も香りも感じられない。



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