恋愛境界線

「そっか、あの二人、結婚するんだ。お似合いだもんね。うん……」


それにしても、きっとショックを受ける社員がいっぱいいるだろうなぁ、なんて。


喋りたくもないのに馬鹿みたいにペラペラと一人で喋り続けていると、渚がそれを遮った。


「……ごめん、それ嘘」


「それって?」


「だから、若宮さんと支倉さんが結婚するって話。たった今、俺が考えた嘘だから」


「えっ……はぁ!?」


場所が場所だけに、声のボリュームはなんとか極力抑えられたけれど、感情までは抑えきれず、渚を思いっきり睨みつける。


「なんで、そんな嘘を()いたわけ?」


「……若宮さんの結婚話だと、遥はどういう反応をするのか知りたかったっつーか」


渚は悪びれることなく平然とした態度で、アミューズとして出されたお皿からシュー生地を一つ口に運んだ。


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