恋愛境界線
ずっと、このままで。
渚と今の関係を保っていたいと思うのは、卑怯なことなのかな……。
ずっと、このままでいられたらいいのに。
私に二択を迫った渚のことをずるいなんて言ったけど、ずるいのはきっと私の方だ。
今の渚が、私に本当に訊きたいことは何なのか察せられるのに、あえて気付かないフリをしているのだから。
私の二歩先を歩く渚の背中。大きな手。
「……渚」
「んー?」
「……ごめん、何でもない。ただ呼んでみただけ」
あの手を取ればきっと幸せになれるのに、どうして躊躇ってしまうんだろう。
今はまだ、「わけわかんねー」と苦笑する渚に、心の中で『もう少しだけ』と願った。
もう少しだけ、待って。
もう少しだけ、このままで――と。