恋愛境界線
結局何も反論できず、本人には悟られない様に、そっと恨みがましい視線だけを向ける。
「判ったなら、もう行きなさい」
視線をこっちに向けもしないで、どこまでも素っ気ない態度の若宮課長。
この人、単純に私のことが嫌いなんじゃないだろうか?
別に、好かれてなくったって構わないけど。
若宮課長は、仕事に私的な感情を持ち込まない人だから、嫌われていたって仕事がしづらくなるわけじゃないし。
だけど、それにしたって、この仕打ちはあんまりだと思う!
とにかく何でも良いから最後に何か一言言い返さないと気が済まなくなって、若宮課長をちらりと盗み見る。
悔しいことに、箸の持ち方、姿勢、食べ方、どれ一つ取っても、文句のつけようもないほど綺麗だ。
下手くそだったら笑ってやろうと思っていた魚の食べ方に至っては――
えっ、猫なの?
思わずそう疑ってしまいたくなるくらい、驚くほど綺麗に平らげていて、それを見たら難癖つけてまで言い返す気力は消え去り、敗北した気分だけが蓄積された。