恋愛境界線

料理は普段、積極的にはしないけれど、嫌いでも苦手でもない。


今日のメニューは今までにも何度か作ったことがあるだけに、手順は頭の中に入っているから手間取ることもない。


軽快にハンバーグに入れる玉ねぎや添え物の野菜の下処理をしていく。


ハンバーグに焼き目を付ける傍ら、ソースやスープを準備する。


こうして料理をし始めると、調理をしている間は何も考えなくて済むし、純粋に楽しい。


けれど、あとは焼き上がりを待つだけになり手を休めていると、ふいに余計なことが頭を(よぎ)る。


支倉さんも今頃は若宮課長のマンションで料理をしてるのかな、とか。


支倉さんは若宮課長に何を作ってあげるんだろう、とか。


そこから先は考えたら駄目だと判っているのに、支倉さんは今日、若宮課長の所に泊まるのかな、とか。


そんなことを考えていたら、口からは無意識の内に重いため息が洩れた。


シンクの縁についていた両手でパチンと頬を叩いていたら、渚がキッチンに入ってきた。


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