恋愛境界線

「……それって、どういう意味?」と、改めて訊ねられ、思わず息を呑む。


これで良いんだ。間違ってない。


きっと、これが私にとっても渚にとっても一番良い選択なんだ。


自分にそう言い聞かせて、止めていた息を軽く吐き出す。


「渚と結婚、しても良いよっていう意味」


「したい、じゃなくて、しても良い、ね……」


「ごめん、そういう意味じゃなくてっ!したいっていう意味だから!」


慌てて訂正するけれど、顔が見えないからどうにも収まりが悪い。


いい加減この体勢をを解こうと、私を抱きしめる渚の腕に手を触れた。


「──嘘つき」


静かに吐き出された言葉と共に、緩んだ渚の腕。


「えっ……?」と、振り向いた瞬間に今度は右腕を引かれた。


見開いた視界には、触れ合うほど間近に渚の顔が映った。


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