恋愛境界線
scene.03◆ ルームシェア、しませんか?
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あの日は結局、課長に返そうと思って持ってきていたワンピースに着替えて、午後からの仕事に勤しんだ。


会社での服装規定は、露出の少ないオフィスカジュアル。


課長に借りたワンピースは、色も派手でなければ、デザイン自体がシンプルな物だったから、上からジャケットを羽織れば、それは違和感なく職場に馴染んだ。


そんなこともあって余計に借りた服を返すタイミングを逃してしまい、一週間近く経った今も、それはまだ私の手元にある。


「明日は休みだから今日中に返したかったのに、何であの人、あんなに帰るのが早いんだろう……」


始業時間が8時半、就業時間が17時15分。その間、休憩が60分。


基本的には実労働7.75時間となってはいるけれど、定時で上がる人は殆どいない。


私も例に洩れず、翌日の打ち合わせ準備等をしていれば大抵19時は過ぎる。


そんな残業が当たり前の職場に居ながら、しかも若宮課長に至っては中間管理職という立場にありながらも、なぜか不思議なことにいつも残業の内には入らないレベルの、比較的早い時間に帰って行く。


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