恋愛境界線
「渚……あの、……その、ご、ごめん」
渚の方へと一歩詰め寄ると、左腕で近付くのを拒まれた。
「遥はさ、自分の気持ちが判んないみたいなこと言うけど、答えなんて本当はとっくに出てんだよ」
自分でも気付いてんだろ?と問われ、それが図星をついてるだけに言葉に詰まる。
若宮課長のことを好きだと、随分前から自覚してはいたけれど、それをどうこうする気はまったくない。
どうしようもないことだって判ってるから、諦める以外になくて。
だからこそ、渚のことをちゃんと前向きに考えようと思った。
その気持ちに嘘はないけれど、ちゃんと向き合ったことがあるかと訊かれれば、素直に頷くのは難しい。
けれど、わざわざ若宮課長と比べたりしなくても、渚は渚で好きだと思える。
「……私だって、渚のこと好きだよ」
「俺の好きと遥の好きは、全然違う」
きっぱりと言い切られ、その言葉の意味に泣きそうになった。