恋愛境界線
「俺のことを好きだって言うくせに、ずっと返事を迷い続けてた時点で、つまりはそれが答えだったってことだろ」
私からは顔を逸らしたまま、渚が言葉で真実を突きつけてくる。
渚の言葉が耳に届く毎に、私と渚の距離は開いていって
渚の言葉が胸に鈍く響く度に、渚が深く傷ついていることを知る。
「ごめん……ごめんね、渚」
立ち尽くしたまま謝る私に、渚が「……何で謝んだよ」と、苦しげな声を洩らした。
居た堪れなくなって今すぐこの場から立ち去ろうとすると、それを察したのか、渚に再び腕を掴まれた。
「さっきの……、悪かった。こんな時に出て行かれると心配になるから、今は俺が出てく」
ここは渚のマンションにもかかわらず、「だから、遥はここに居て」とだけ言い残すと、渚は私に断る隙さえ与えずに、すぐさま背を向けて外へと出て行った。
突き飛ばしてから、一度もちゃんと私の方を見ることはなかった。
それなのに、こんな時まで優しい渚に胸が苦しくなる。