恋愛境界線
ハンバーグを焼いていたフライパンへ近づき、IHの電源をオフにする。
渚を喜ばせようと思って作ったのに。
あんな形で傷つけてしまったことが悲しくて、力なくその場にへたり込む。
もう好きだなんて、言葉にすることは出来なくなってしまったけれど。
渚とは違った好きだったかもしれないけれど。
──それでも、確かに好きだった。
幼なじみとして。友人として。家族の様に。
間違いなく、渚のことが大切で、大好きだった。
へたり込んだ私の膝頭に、想いの欠片が涙となってぽたりと滴り落ちる。
「……っ、ごめん……渚、ごめんね」
いつも勝手で、面倒をかけてばかりなのに、こんな私を見放すことなく好きでいてくれた。
そんな渚の気持ちに応えられないことが、こんな風になっても尚、どうしようもない自分の気持ちが、酷く苦しかった――。