恋愛境界線

スマートに立ち去りたかったのに、一歩前へ踏み出した途端にみっともなく足元がグラついた。


「……その缶といい、もしかして酔っているのか?」


「酔ってません……多分」


「多分って……」と、私のセリフに呆れた様にため息を吐き出した若宮課長は


「送っていくから、住所を言いなさい」


まるで補導する警察官の様な厳しさでそう告げ、私の腕を引いて傘の中へと引き摺りこんだ。


「い、いいです!本当に大丈夫ですからっ」


だって、渚とあんなことがあったばかりだというのに、若宮課長と一緒になんて居られない。


居られないというより、居たくない。


今すぐこの腕を放してもらおうと、暴れる様にひたすら上下に振り回す。


けれど、課長の手が離れることはなくて、より一層強く掴まれてしまった。


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