恋愛境界線

ゆっくりとドアを開けると、リビングダイニングに置かれたソファに課長の背中を見つけた。


「あの、若宮課長……」


そっと声を掛けるとその背中は微かに揺れて、寝ぼけ(まなこ)の若宮課長が、「起きたのか」と言いながら、立ち上がって私の方へと近付いてきた。


カーテンが引かれていてもうっすらと外が明るいことは判って、壁に掛けられた時計を見れば6時半を指している。


いつ、どうやって、ここに連れられてきたのか判らないけれど、自分が長い時間眠っていたことだけは判った。


「……もしかして、ここで寝たんですか?」


「他に寝る所がないからね」


「もう一つ、ソファベッドがあるじゃないですか」


そっちに私を寝かせてくれれば、課長は自分のベッドでゆっくり寝られたはずなのに。


「……あれなら、もう使うこともないだろうと思って、ちょうど欲しがってた友人に譲ってしまったんだ」


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