恋愛境界線
けれど、頭はぼんやりするし、身体に力が入らなくて、とにかく怠い。
こんな状態ではとても仕事は出来そうになくて、仮に出社したところで、ミスを連発してしまいそうだ。
今日は課長の言葉に従って欠勤することで頷くと、再びベッドの中に押し込められた。
ドアを隔てた向こう側では、課長が朝の支度をしている気配が感じ取れる。
意識をそちらへ向けていると、暫くして寝室のドアが開いて若宮課長が入ってきた。
サイドテーブルの上に、コップとペットボトル入りの水が載ったトレイを置いて、私の顔を覗き込んでくる。
「向こうにお粥を作っておいたから、あとで食べなさい」
そう言って、「それじゃあ、私は仕事に行くが、くれぐれも安静にしていること」と釘を刺すことも忘れない。
課長と関わりたくないと思っていたのに、またしても下着姿を見られた挙句、こうしてベッドまで借りてしまうなんて……。
情けなくて一刻も早くここから出て行きたいけれど、こんな状態じゃ出て行けない。……服もどこにあるのか判んないし。
「大丈夫です。大人しく寝てますから、課長は私の分までお仕事を頑張ってきて下さい」
軽口をたたくと若宮課長は鼻で笑う様にふっと笑って、「行ってくる」と言って出て行った。