恋愛境界線
途中で一度、うっすらと目が覚めた気がするけれど、すぐにそのまま眠ってしまったこともあって、ほぼ一日中寝ていたことになる。
他人の家でこんなに何時間も熟睡するなんて初めてで、それだけここで安心出来ていた自分に驚く。
若宮課長は帰ってきたばかりらしく、出勤する前と同様にまだスーツ姿だ。
「芹沢君、熱は下がった?おかゆが手付かずで残ってたけど、食欲は?」
「ずっと寝ていたから気にならなかったんですけど、言われてみたらお腹が空いてきました」
熱が下がったせいか、丸一日何も食べていなかったせいか、朝には全然なかった食欲が自然と湧いてきた。
「課長が朝に作ってくれたおかゆ、頂きます」
「さすがにそれは作り直すよ。もしお粥以外にリクエストがあるなら、自分の分と一緒に作るが?」
なんだか、課長が妙に優しい気がするのは気のせいだろうか。
まぁ、今の私は一応病人なわけだから、そのせいかもしれないけれど。
そんな課長をじっと見つめながら、遠慮なくリクエストすることにした。