恋愛境界線
熱が下がったことを信じてくれたのか、私の額から手を離した課長は、ぶり返さない様にと私に自分のニットカーディガンを羽織らせた後、すぐに夕飯作りに取り掛かった。
なにか手伝おうと思ったのに、邪魔になると言われてしまっては大人しくしているしかない。
ソファに座って眺めていると、次第に良い匂いが漂ってきて、お腹が鳴ったタイミングで夕飯が運ばれてきた。
手際の良さに驚く私の目の前には、ほかほかと湯気を立てたお粥と梅干、塩昆布。それとリクエストの卵酒。
その向かい側には、課長のカレーライスと卵スープが並べられた。
「……課長、そのカレーいつのですか?」
「いつのだとか失礼だな君は。一昨日作って冷蔵庫に入れておいた物だから、まだ食べられるよ」
カレーと比べたらほぼ無味無臭なお粥とは対照的に、前方からは食欲を刺激するスパイシーな香りが鼻先いっぱいに漂ってくる。
しかもそれが、よりにもよって三日目のカレーだなんて……!
「私もカレーが良いですっ!」