恋愛境界線
「そういえば、君は昨日も泉がどうのと言っていたが、一体何のことだ?」
「えっ……、いや、だから、支倉さんがご飯を作りに来てたんじゃないかと思いまして」
「ここに?昨日、私は家を空けていたから会ってないが?」
そう言われてみれば、私が会った時に課長は女装をしていたんだった……。
「私がいなくなった途端に、女装再開したんですね……いえ、別に構わないんですけど」
見てしまったことを申し訳なく思いながら、課長からそっと視線を逸らす。
「まるで私が自主的に、女装を好んでしてる様な言い方をしないでくれないか?」
「まるで、自分は嫌々している様な言い方ですね」
「まるで、ではなく、その通りだ」
本当に嫌なことは絶対にしなさそうな性格なのに、他にどういう理由があって女装をしているというのか。
「……芹沢君、今の君の顔には『またまた』と書かれているが、以前にも話しただろう?ラウンジ経営をしている姉に、無理やりヘルプとして駆り出されている、と」