恋愛境界線

「そう言われてみれば、そんな話を聞いたことがある様な、ない様な……」


「自分でも言うのもなんだが、初めて他人に話したということもあって、自分なりに結構インパクトのある話だと思っていたが、君にとってはその程度の薄い印象なんだな」


「そういうわけじゃなく、あれから色々あったので……」と返しながら、記憶をぼんやりと手繰っていく。


課長が、「まぁ、それくらい軽く受け止められた方が、こちらとしても気は楽だけども」とか、なんとか言っている内に、私が課長のことをゲイだと勘違いしていた頃に、そんな話をしてくれたことを思い出した。


「ああ!表面上は殊勝な態度を取っていても、裏ではがさつで厚かましく、すぐに感情的になるっていうお姉さんですね!」


「……確かにそうなんだが、君は変なところばかり覚えているんだな。一つ訂正するならば、あの時は君を含めた女性全員を総称して、そう言わなかっただろうか?」


半端な思い出し方をしないでくれ、と課長の口の端が心なしかヒクついている。


「そうでした。女性全てに対しての言葉でした」


但し、支倉さんを除いて――だろうけど。


「でも、課長ともあろう人がどうしてお姉さんには、そんなにも頭が上がらないんですか?それは聞いてないですよね?」


課長を上回るくらいの強烈な性格をしているのだろうか?なんて、頭の片隅で考える。


あるいは、よっぽど何か不都合な弱みを握られている、とか……?



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