恋愛境界線

ぽつりと零した私の言葉に、課長の眉間にシワが寄る。


「それを言うなら、水と油じゃないのか?」


課長の怒りに火を注ぐという意味で、火と油と言ったのだけれど、どこまでいっても結局相容れない私たちの関係は、課長の言う通り、水と油の関係なのかもしれない。


「そうとも言いますよね。あるいは、宗教と科学とか?」


「突然、物騒な例えを持ち出してきたたものだな」


苦笑した途端、課長の不機嫌オーラがほんの少しだけ和らいだ。


そのことにホッとしながら、ふと思った。


もしも、課長と付き合ったらこんな感じなのかな、って。


いつも些細なことで怒らせて、でもそうしたら、私が他愛もないことで笑わせてあげたりして。逆に私が困った時は、いつも呆れながら助けてくれたりもする。そんなことの繰り返し。


なんだかんだで、上手くやっていけそうな気がするんだけどな――なんて、勝手な想像を巡らす。


「何て言うか、()れ鍋に綴じ蓋……?」


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