恋愛境界線
確かに、課長をソファに寝させるわけにはいかないと言ったけれど、それはつまり、“イコール一緒に寝る”というわけでは、決してない。
課長を二日続けてソファに寝させるのは問題だけど、かといって、一緒に寝るとなると、それは更に大問題だ。
いまはもう課長への気持ちを自覚してしまっていて、以前とは違う。
「ほんの冗談で言ったことを、そんなに真に受けないでくれ。居た堪れなくなるじゃないか」
苦笑しながら課長が首筋を擦る。
「か、課長の冗談は判りにくいんですから、ビックリさせないで下さいっ!」
私をからかって一体なにが楽しいのか、若宮課長が小さく笑いながら寝室のドアを開けてくれる。
そのまま「おやすみ」と言いながら、そっと私を部屋へ押し込もうとした。
そんな若宮課長を前に、思わず足が止まる。
「──やっぱり今夜は、若宮課長もベッドで寝て下さい」
私の言葉に、若宮課長の動きが一瞬止まった様に見えた。
「仕返しのつもりの冗談だろう?その手には引っ掛からないから、とっとと寝なさい」