恋愛境界線
『……遥?もしもーし、聞こえてる?』
「あ、うん。大丈夫、聞こえてるよ」
『ところで、今からすぐ来る?ご飯まだなら、遥の分も作っておくけど?』
「有難う、純ちゃん。でも……、やっぱり今日は他の子の所に泊めてもらうことにする。急にごめんね」
今居る場所からだと、その子のアパートの方が近いし――と、適当な言い訳を付け加える。
だけど、純ちゃんはすぐに私の言葉が嘘だと気付いたのか、少しだけ迷って「……あ!それなら」と言った後
『渚のトコに泊めてもらったら?あそこなら、遥の職場からも近いんだし』
私と純ちゃんの共通の友人の名前を出し、そう提案してきた。
「あー……うん、そうだね。じゃあ純ちゃん、またね」
通話を終えてスマホをバッグに仕舞い込み、空を見上げて息を吐き出す。
純ちゃんにはああ言ったものの、さてどうしようか、と考えながら。