恋愛境界線
「渚ってさ……、お人好しだよね」
「最悪。それ、今の俺が、遥に一番言われたくないセリフなんだけど」
「ごめん」
「それも」
「……じゃあ、ありがと」
「86点かな」
「偉そうに!いい加減、仕事の時だけかける、その伊達眼鏡やめたら?」
「それは余計なお世話だ」
わずか数メートルの距離を隔てて、言葉がポンポン行き交う。
距離を隔てていても、心の距離は以前の様に近くに感じられる。
「やべ、本当に行くわ。落ち着いたら純と三人で、またメシでも食いに行こう」
私が断ることなんて考えてもいない様な、ごく自然な口調でそう言うから
私も今までと変わらず当たり前なことの様に、大きな声で「うん」と答えた。