恋愛境界線
家財は未だに渚のマンションに置いたままになっているけれど、けじめとしていい加減に引き取らないと。
そんなことに思いを巡らせていると、純ちゃんが「少しは復活したみたいで安心した」と、私を見て微笑んだ。
「今。遥が渚の名前を口にするのを躊躇ったりしなかったから、勝手にそう思ったんだけど」
「うん……。この間、渚が縁談は断ったって報告しに来てくれて、その時に色々話したら気持ち的に軽くなったっていうか」
「そっか。ちゃんと話したんだ」
「うん。純ちゃんには、いっぱい心配かけてごめんね」
「ううん。私の方こそごめん。そもそも渚を焚きつけたのは私だし、本当にごめん」
「じゃあ、おあいこだね」
「……ありがと。遥のそういう優しいとこ、本当に好きだよ」
そう言って、純ちゃんはなぜか泣きそうな顔で笑った。
学生時代からいつも三人一緒に過ごすことが多く、ことあるごとに、私と渚がくっつけばいいのにと言ってきた純ちゃんなだけに、私たちがぎくしゃくしてしまったことで随分と気を揉んでいたに違いない。
人のことを気遣ってばかりいる純ちゃんのことだから、今回のことで自分を責めたりしたのかもしれないし。
純ちゃんが泣きそうに見えたから、釣られる様になんだか私まで泣きそうになった。