恋愛境界線
いざマンションまで辿り着いたものの、若宮課長のルームナンバーが判らないことに気付く。
三階の角部屋ということは覚えているのだけれど、それが何号室だったかまでは覚えてなくて、オートロックシステムの所為で、中に入るどころか、課長を呼び出すことすら出来ない。
コンシェルジュに頼んで呼び出してもらおうかと思った矢先、ここの住人らしき男性が私の横を通り過ぎた。
ちょうどコンシェルジュが電話応対に気を取られている隙に、住人らしき人に便乗して一緒にドアを抜ける。
エレベーターに乗り込もうとしていると、背後からは新たに女性が一人やって来た。
先に居た男性が五階を、後から来た女性が乗り込むなり三階のボタンを押す。
三階に止まることを確認した私は、勝手に侵入した疾しい気持ちから、自分の足元に視線を落とす仕草で顔を伏せた。
それにしても、どうしよう。
いくら服を返すだけとはいえ、やっぱり連絡もなしに来たのは失礼だったかも……。訪問するには、時間も時間だし。
エレベーターが上昇するにつれ、自分の非常識さに、日を改めようかという考えが浮かぶ。