恋愛境界線

純ちゃんと若宮課長は面識がないけれど、それでも若宮課長のこの姿を、本人の許可なく第三者に見せてしまったことになるし、何より――


『この人、男の人だよね?女装した男の人と遥の組み合わせなんて珍しいけど、一体どういう知り合いなの?』


『私の好きな人なの』


……私の好みを疑われる。


それに、純ちゃんは私が課長を好きだということを知っているから、この人が私の上司だってすぐにバレるだろうし、それはそれで、一体どんな上司だって話になってしまう。


「この人……どこかで見たことがある様な気がするんだよね。しかも、つい最近……?」


「えっ?いつ、どこで!?」


「えっと、最近出掛けたのは……夜に雨が降った日だから――そうだ、渚がうちに来た日!」


純ちゃんは、仕事の付き合いで連れて行かれた先のお店で、若宮課長を見掛けたらしい。


「やっとうちに帰ってこれたーって思ってたら、マンションの前に渚が傘も差さずに、ずぶ濡れで立ってたから覚えてる」


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