恋愛境界線
静かに上昇を始めたエレベーターがすぐに目的の三階へと到着すると、ドアの手前にいた女性が降り、それに続いて私も降りた。
こうなったら、もう悩んだって仕方ない!別に室内に上り込むわけじゃないし、課長にドア先でこれを渡してさっさと帰ろう!
そう思って顔を上げる。
私の前を歩く女性は、今時珍しいくらい綺麗な黒髪をしていて、背も高い。
170cmは余裕でありそうな後ろ姿は、姿勢が良いだけでなく、均整のとれた身体をしていて、カツカツとヒールを鳴らして歩くその姿を見ながら、まるでモデルみたいだと思った。
だけど、その靴音も三階の一番奥の部屋の前でぴたりと鳴り止んだ。
あれ?そこって、若宮課長の部屋じゃ……?
思わず足を止めた私の目の前では、女性がバッグから取り出した鍵を、妙に慣れた動作でドアへと差し込む。
もしかして、私が借りたワンピースの持ち主――若宮課長の元カノ、とか……!?